芥川龍之介「河童」より
僕は週末リュック・サックを背負い上高地の蝶ヶ岳に登ろうとしました。
そして梓川をどんどんさかのぼって行きました。
霧の下りてきた梓川を離れないように熊笹の中を分けてゆきました。
二時間ほど歩き足もくたびれたので、僕は水ぎわの岩に腰かけて休んでおりました。
すると何やら背中に視線を感じましたので、驚いて振り返りました。
すると―僕が河童を見たのは実にこの時がはじめてだったのです。
僕は呆っ気にとられたまま、しばらくは身動きもしずにいました。河童もやはり驚いたとみえ、その場から動かずにいました。
そして僕は河童を捕まえようと、飛びかかりました。
しかし、河童はひらりと身をかわしたと思うと、たちまちどこかへ消えてしまいました。
おしまい。
すると何やら背中に視線を感じましたので、驚いて振り返りました。
すると―僕が河童を見たのは実にこの時がはじめてだったのです。
僕は呆っ気にとられたまま、しばらくは身動きもしずにいました。河童もやはり驚いたとみえ、その場から動かずにいました。
そして僕は河童を捕まえようと、飛びかかりました。
しかし、河童はひらりと身をかわしたと思うと、たちまちどこかへ消えてしまいました。
おしまい。
『河童』は芥川龍之介の晩年の作品です。
僕はこの『河童』が好きで、一度この地に行ってみたかった。
僕には文学としての難しいことはわかりませんが、『河童』は河童社会を現代の人間社会をとりまく様々な問題、政治、経済、宗教観などに置き換えて考えると、超人ゆえの苦悩が感じとれます。
そして僕も医療人の端くれとして、まさに現代社会が直面している「心の病」や患者(=人間)の選択権や自由意志を最大限に尊重する究極のインフォームドコンセントと思われる、あるいは宗教的な意味合いが色濃くでている部分はとても面白いです。ただ個人的には時として医療パターナリズムは重要だと思っています。
ちなみに登場(河童)人物では僕はトックが好きですquack!